CULTURE

和田家

2022/12/23 更新

居住しつつ、300年の歴史を守り続ける白川郷最大の合掌造り民家。

300年の歴史を守り続ける、白川郷最大の合掌造り民家

平成7年、ユネスコの世界遺産に登録された白川村萩町の合掌造り集落”白川郷”。
その北端に位置しているのが、国・県指定の重要文化財になった合掌造りの代表「和田家」です。
雪深い地域である白川郷では、積もった雪を地面に落としやすくするように、急勾配の茅葺屋根が作られるようになりました。
この屋根が、手を合わせた時の”合掌”の形に似ていることから「合掌造り」と名付けられたのです。

「和田家」は、江戸中期に建てられた白川村に現存する合掌造り家屋の中で、300年以上の歴史を誇る、最大規模の合掌造りの民家。
代々名主を勤め、初代村長も務めた家柄で、江戸時代には名主や番所役人も勤めており、焔硝(鉄砲の火薬・花火の原料として使われた)の製造取引によって富を得るなど、政治的にも経済的にも大きな力を持っていたとされています。
最盛期には20人以上の人が住んでいたとも言われています。
建物はもちろん、周辺の庭や生け垣、田畑や水路なども含めて昔のままに保存され、かつての風景をそのまま感じることができます。

内部には、梁や柱などが縄で縛られてある(釘を使わない)様子や、急な階段、囲炉裏の煙りで艷やかに燻された材木など、特徴的な内部構造が見られます。
茅葺屋根の維持のため、囲炉裏の火は年中欠かさずいれられ、煙によって茅や木材の防菌・防虫を行っています。
囲炉裏の火を絶やさないことで、日常的な燻煙作業を行っているのです。

「和田家」の仏間の前には、役人など貴賓専用であったとみられる式台つきの玄関があり、その間取りからは格式をもった造りであることがわかります。
入り口を入ってすぐに広がる大広間は、建物中心にあたる広い空間。
かつてこの場所は地域の伝統芸能の一つである獅子舞の練習場になるなど、今では公民館で行う行事等に使用されていたといいます。
家族の団らんの場であると同時に、地域の人々の団らんの場でもあったことが伺えます。
それは現在にも受け継がれ、今ではこの場所を一般公開することで、観光客をはじめとした地域外の人々が多く行き交う場所となっており、先人が創造した歴史あるものを、後世に伝える役割を果たしています。

建物内は、居間、寝室、客室、仏間などのほか、民具、農具、婚礼時や祝い事に使用された赤漆の食器などが展示され、当時の暮らしを垣間見ることができます。
1階と2階部分の展示を行いながら、それ以外のスペースでは現在も和田さんご一家が住み、歴史ある茅葺の家屋を守り続けています。

屋根裏のような雰囲気の2階では、主に養蚕が行われていました。
合掌造りの家屋は屋根裏部分の床面積が広く、風通しや日当たりもいいことから養蚕に適しており、1970年頃までは盛んに行われていたといいます。
産業としての養蚕は途絶えてしまいましたが、和田家では文化の伝承を目的として、実際に育てて展示しています。
様々な道具なども残っており、当時の生活を垣間見る貴重な時間を過ごせます。

国指定文化財と聞くと「古い建物」というイメージが先行しますが、そこにはかつての生活の息吹が残っており、今の私たちの生活にも十分通じる何かを呼び起こしてくれます。
かつての人々の営みにふれ、歴史の重みを感じてみてはいかがでしょう。

ACCESS INFORMATION

住所 岐阜県大野郡白川村荻町山越997

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